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リンパ腫再考 第11回日本獣医がん学会レポート

 昨年(2014年)7月上旬、山下は第11回日本獣医がん学会に参加してきました。ちなみに右の写真は東京駅近くの会場の写真です。今回の学会のメインテーマは高分化型リンパ腫でした。リンパ腫の診断と治療は最近またいろいろと細かいところが変わってきているように私は感じています。そこで、もう一度リンパ腫について新しい知見も紹介しながら再考していきたいと思います。オーナー様向けのレポートのために、難しい専門的な話はなるべくなしとしてわかりやすく書きたいと思います。なお、学会レポート掲載が今回もかなり遅れてしまったことをお詫び申し上げます。先日終了した第12回日本獣医がん学会(メインテーマ:副腎腫瘍)についてのレポートはもうすこし早く掲載するよう努力いたします。

リンパ腫っていろんな分類法があるなあ

 実際、リンパ腫というのは様々な分類法があります。解剖学的部位による分類(消化器型リンパ腫など)、挙動による分類(高悪性度or低悪性度)、組織型による分類、免疫型による分類などなどたくさんあります。そして、これらの分類を組み合わせることによって、さらに新Keil分類、WHO分類などの分類もされています。オーナー様がよく聞くリンパ腫というのはこれらを全部ひっくるめた総称になっています。これらの細かい分類をオーナー様を代表とする一般の方が全て理解することは不可能だと正直思います。よって最低限、めっちゃ悪いもの(高悪性度)と、まあまあ悪いもの(低悪性度)がリンパ腫には存在することを理解しておくとよいのではないかと思います。
 リンパ腫の腫瘍細胞というのは、細胞自体が未熟でどんどん分裂増殖していくもの(しこりがどんどん増大するもの)ほど悪いという性質があるので、分化の進んでいない低(未)分化で未熟なものほど悪いものということになります。逆に、細胞自体が成熟して分化の進んだ高分化なものは低(未)分化なものよりは悪性度は下になります。まとめると。めっちゃ悪いのが高悪性度リンパ腫=低(未)分化型リンパ腫=英語でHighgradeリンパ腫、まあまあ悪いのが低悪性度リンパ腫=高分化型リンパ腫=英語でLow gradeリンパ腫となります。これだけ覚えるだけでもリンパ腫の診断・治療に対する理解が違ってくると思います。覚えやすく換言すると、めっちゃ悪いリンパ腫か、まあまあ悪いリンパ腫かの2つに分かれるということです。いずれにせよ悪いに違いはないのですが。
 リンパ球系細胞は免疫学的に大きくB細胞系とT細胞系の2つに分かれるために前述のめっちや悪い、まあまあ悪いの分類に免疫学的分類を加えることで、さらにもう一段分類して治療指針、予後評価につなげています。いわゆる新Keil分類というのものがこれにあたります。B細胞性低分化型などと呼ばれるものです。リンパ腫には、めっちゃ悪い(低分化型)B or T、まあまあ悪い(高分化型)B or Tの4つがあるとでも覚えるといいような気もします。


高悪性度リンパ腫=低分化型リンパ腫の診断と治療

 低分化型リンパ腫、とくにワンちゃんの全身のリンパ節が腫れる多中心型低分化型リンパ腫の診断についてはすごくシンプルです。腫れているリンパ節から針で細胞を採取して、その細胞を観察する細胞診によりほぼ確定診断となります。それに加えてリンパ腫の進行度評価のために一般的な検査ももちろん必要になります。場合によっては、免疫学的分類つまりB細胞性かT細胞性かをみるために、遺伝子検査や免疫染色も行うことがあります。低分化型リンパ腫の場合、B細胞性かT細胞性かによって治療反応や予後が大きく異なることが分かってきているのでB or T分類をすることに意義があるかなと思っています。T細胞性の場合はB細胞性に比べて、非常に治療成績が悪く、生存期間も短いとされておりT細胞性低分化型リンパ腫をなんとか攻めようと世界中で研究が今なされています。なお、細胞診で低分化型リンパ腫と診断された場合、そのリンパ節を摘出して病理組織診断をする意味は現状私はないと思っています。なぜなら、病理組織でさらにリンパ腫を組織型細分類したところで治療法に変わりがないからです。治療の個別化は現状そこまですすんでいません。
 最も一般的なB細胞性低分化型リンパ腫の治療については、あまり治療法、治療成績にここ最近変化はありません。いろいろやり方(プロトコル)の多剤併用化学療法を用いてしても1年生存する症例が約半分、2年生存する症例が2〜3割という結果にずっと変わりはありません。この生存期間を飛躍的に延ばすようなブレークスルーもまだ起きていません。あえて、変わったことと言えば抗がん剤の副作用を抑えるようなよい薬剤がいくつか出てきたことです。たとえば、制吐剤のマロピタント(商品名セレニア)も動物用薬として現在発売されています。


低悪性度リンパ腫=高分化型リンパ腫の診断

 高分化型リンパ腫の場合、先ほどの低分化型リンパ腫の診断ほどシンプルではありません。細胞診だけでは確定診断にはいたりません。細胞診で分かるのは増大傾向や他の検査結果も加味したうえで高分化型リンパ腫疑いであることしか言えません。確定診断には、リンパ節切除そして切除標本の病理組織検査が必須になります。細胞異形だけでなく、リンパ節の構造異形までみてみなければ診断できません。
 高分化型リンパ腫というのは、低分化型リンパ腫に比べて進行が緩徐で無症状期間が長いのでどこか油断していたところが私自身ありました。予後はいいほうだという認識があったのは事実です。しかし、数年前からそうではないことが分かってきました。あくまで、高分化型リンパ腫は潜在悪性であるということです。いま(初期)は、それほど悪い挙動をしていないけれど、いつ悪性に移行するかわからない性格を持っているということです。
 高分化型リンパ腫はひっくるめてどれもまあまあ悪くて、長期生存も可能というこれまでのイメージと違って、B細胞性とT細胞性では挙動が大きく違いそうだぞということもさらに分かってきています。これまでのイメージに則した高分化型リンパ腫はどちらかというとT細胞性の方なのかなと感じています。B細胞性の場合は初期には低悪性度というだけで後から高悪性度に変わることもあるということです。B細胞性高分化型リンパ腫の中でも病理組織検査を通して診断できるマージナルゾーンリンパ腫はこの性格が強いので、やはり治療・予後評価のために病理組織診断、免疫学的分類は必要だと思います。高分化型リンパ腫では組織型により予後が異なるという発表が多くされていることも病理組織診断が必要な理由の1つだと思います。
 これらのことから、現状で予後評価のために3つにリンパ腫を分けるとすると予後の悪い順にT細胞型低分化型リンパ腫>B細胞型高or低分化型リンパ腫>T細胞型高分化型リンパ腫という傾向があるようです。高分化型、低分化型両方のリンパ腫の予後因子としてBorT分類はやはり重要であると感じました。


低悪性度リンパ腫=高分化型リンパ腫の治療

 高分化型リンパ腫はまだ確固たる治療法が見つかっているわけではありません。犬の高分化型リンパ腫治療ガイドラインというものがありますのでそれに従った治療が一般に実施されているのが現状です。
 特にT細胞型高分化型リンパ腫では臨床症状がでていなければ、経過観察のみで化学療法をしないことも多々あります。もし、リンパ節が急速に増大しはじめた、血液検査で異常が出たなど、このような場合にクロラムブシルやメルファランといったアルキル化剤を中心とした化学療法を開始します。低分化型に用いるような多剤併用化学療法はあまり選択しません。
 B細胞型高分化型リンパ腫の場合も発生部位にもよりますが、治療開始時期、治療内容はT細胞型と同じ様に考えます。
 ただし、高分化型リンパ腫は低分化型に移行する場合もあるので、場合によっては多剤併用化学療法を選択した方がよい場合もあります。どういうときにどの化学療法を使えば一番よいのかというのは、高分化型リンパ腫においてはいまだ答えがでていないのが現状です。これから、様々な臨床研究がされて論文発表されてくると思います。


まとめ

 今回は最近のリンパ腫の診断・治療で変化があったなあと私が感じたことをかんたんに書いてみました。リンパ腫を細かく分類することの意味は、もちろん話を複雑にするためではなく、治療の個別化をすすめるためです。「このタイプのリンパ腫にはこの治療」というのがこの先もっともっと出現するかもしれません。今はけっこうざっくりした括りの中でリンパ腫の治療が行われていますが将来は変わってくるはずです。

 リンパ腫の診断・治療について、なにかお悩みのことがあれば気軽に当院にご相談ください。


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