前編でリンパ腫の分類とポケモンのことについていろいろ書いてはいるのですが…
実際は、
犬猫のリンパ腫のこと細かい分類について私はすべて覚えて理解していません。
とはいえ、
よくある重要な(挙動や予後、治療法が報告されているような)分類についてはなるべく理解するようにはしています。
~リンパ腫の分類について真剣にいろいろ手を出し始めるととにかく大変です…~
私の勝手な個人的感想なのですが、
ここ5年くらいで各種分類ごとのリンパ腫の挙動や治療法、予後がすこしづつわかってきてるような気がします。
たとえば、
なんかここ数年増えてきている気がする猫の消化器型リンパ腫について、
細胞の形態やBorTといった免疫表現型、病変がどこにあるのか?の3つの要素で分類してそれぞれにあった治療をするようになってきています。
場合によっては外科治療も選択肢に入ってきます。
犬の多中心型リンパ腫について、
緩徐に動くタイプとアグレッシブに動くタイプで分類してそれぞれにあった治療をするのが当たり前のようになってきています。
緩徐に動くタイプではリンパ節生検からの病理組織検査が診断オプションに入ってきます。
「リンパ腫の分類」と「治療や挙動・予後予測」の関係が明らかになればなるほど、精度高く分類された診断がもっともっと重要になってくるかもしれません。
今は、細胞診だけでリンパ腫を診断・治療をすることが正直多いのですが、
今後は、
細胞診+αでより病態にフィットした治療をしていくのが主流になる!
と思います。
ここから話がガラッと変わるのですが、
当院では、年を追うごとに犬or猫のリンパ腫を診断・治療する機会が非常に増えています。
現状、毎週なんらかの化学療法を実施しています。
↑当院ではL-アスパラギナーゼとビンクリスチンは常に在庫を置くようにしています。リンパ腫の化学療法を担当しているなかでビンクリスチンはけっこう怖い薬だなという印象を持っています。そんなこともあって、L-アスパラギナーゼをスタートとする化学療法が当院では増えています。
もうこれ以上はスケジュールとマンパワーの関係で化学療法の新規受け入れは難しいかな?と思うこともよくあります。
かなりタイトになりつつある当院スケジュールなのですが、
上記のように、
犬と猫のリンパ腫は分類してそれにあった治療をしよう♪
のような感じになってきているのでリンパ腫を十把一絡げ(じっぱひとからげ)に説明せずに
いま、その動物が罹患しているリンパ腫が具体的にどういうタイプのリンパ腫でどういう予後でどういう治療法があるのか?
をわかりやすく説明しようと私は心がけています。
このような説明、特に治療の説明の中で、
化学療法(≒抗がん剤療法)をするのか?
それとも、
対症療法だけにするのか?
化学療法をするとして、
どこまでのレベルの化学療法にするのか?
~アグレッシブに攻めるのか?マイルドに攻めるのか?~
という説明(≒話し合い)には時間を丁寧に使いたいと思っています。
私の場合、
この説明(≒話し合い)をするにあたって大切にしている化学療法のための3つの要因があります。
ひとつ目が獣医師の要因です。
たとえば、
化学療法の知識と経験、副作用をなるべく回避・予防するための知見、化学療法にあたる当院スタッフ同士の連携などが獣医師の要因だと思います。
動物病院の夜間対応、休日対応の可否も獣医師の要因だと思います。
これらのことをよく考えたうえで当院でできることorできないことを獣医師としてオーナー様にお話しています。
ふたつ目が動物の要因です。
たとえば、
年齢や性格、全身状態(忘れがちですが、ひどい歯周病や歯石の有無もけっこう重要)、既往歴などが動物の要因だと思います。
~リンパ腫を診断するときには必ず全身状態の評価もします。これは動物の要因を把握するためでもあります~
この動物にこの化学療法をしてどれくらいの効果が期待できるのか?を考えることも動物の要因の一つだと思います。
動物が化学療法に耐えうる体力があるのか?静脈点滴を安定してできるのか?などによってどのレベルまでの化学療法が可能かを判断します。
みっつ目がオーナー様ご家族の要因です。
通院頻度はどこまで許容可能か?日頃動物をこまめに観察できるのか?ご家族に妊婦さんや小さな子供さんがいるのか?
そして、治療費負担のことなどがご家族の要因だと思います。
オーナー様自身の死生観や病気への哲学観も家族の要因の一つだと思います。
これら3つの要因を軸に説明することによって、
オーナー様が治療の選択肢を理解して決定しやすいように努めています。
完治が難しいリンパ腫と対峙する時、いつもいつでもうまくいく保証はどこにもないのですが、
獣医師と病院スタッフ、動物、ご家族の要因を総合して考えて、
いま、このワンちゃんやネコちゃんになにをしてあげられるのか?
を一番に考えて治療にあたっていきたいと思います。
いろいろな要因があれど、最後はこのことをひたすら考え抜くことが最重要だと思います。
仮にどれほど悪い状況だとしても、目の前の動物のためにできることは必ずあります。
そして、
それを私は信じています。
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