腫瘍科診療指針
ワンちゃん、ネコちゃんの腫瘍には様々なものがあります。すぐに見つけられるものから、外見からはわからないものまで様々です。その様々な腫瘍ひとつひとつの性格(挙動)もまったく違います。腫瘍治療にはそれぞれ性格(挙動)の違う腫瘍を的確に診断して、性格(挙動)にあった治療をしなければ、なかなか打ち勝つことができません。
当院では、オーナー様の要望があれば、腫瘍の的確な診断と、その腫瘍に打ち勝つための治療の選択肢をご提示するようにしています。治療の選択肢の中で外科治療については、当院では実施できない症例もあるので、そのような場合には二次診療に対応可能な動物病院に紹介させていただいています。
当院では、すべての腫瘍治療を決して行えません。中程度から高度な外科治療はほとんど実施できません。
しかし、この腫瘍がどのような腫瘍で、どんな動きをして、どうして命の危険が生じるのか?そして、その腫瘍を制御もしくは治すにはどのような治療が必要で、どういう治療の選択肢があるのかという判断し、飼い主様に説明ができると自負しております。どこまで当院で対応できて、どこからができないのかということも、はっきりと飼い主様にお伝えいたします。
ワンちゃん、ネコちゃんの腫瘍でどうしたらいいか?と悩んでいたり、どんな腫瘍なのかな?治療は?と気になっているオーナ様の希望や光になりうる病院に、幸運にも選んでいただけたとするならば、当院のスタッフは苦しむ動物やオーナー様と共に「今ここにある腫瘍」と戦います!戦闘準備はもうできています!
なお、当院で専門的な腫瘍診療・治療をご希望のオーナー様は「午後1時30分以降の来院」「副院長 山下の診療希望の一言」をお願いいたします。午前の診察時間ではゆっくりとお話しすることや、検査・治療することができません。
腫瘍の診断
私が尊敬する先生から教えていただいたものにはなるのですが、私が腫瘍の診断で常日頃から大切にしている3つの大きな柱があります。①病理組織診断 ②臨床病期(ステージ)の評価 ③全身状態の評価 この3つです。
当院で私が腫瘍を診断するときにはこの3つの柱を軸としています。そしてこの柱は腫瘍診断の基本になります。この柱に沿う形で必要な検査を行っていきます。
ここに腫瘤があるとして、それが何であるかが病理組織診断あり、その診断には細胞診や様々な生検、腫瘤摘出してからの病理診断が必要になります。
では、その腫瘤が腫瘍だったとして、その腫瘍がどこまで体に拡がっているのかを診るのが臨床病期(ステージ)の評価になります。視診・触診などの身体検査から始まり、レントゲンやエコー検査、場合によってはCT検査などなどが必要になってきます。腫瘍が局所でとどまっているのか、全身に散らばっているのかではその後の治療が大きく変わっていきます。
そして、その腫瘍を治療するとして、現在の動物の状態が大切になってきます。そもそも治療に耐えうる体力があるのか?どこまでの強度の治療が可能か?などなど判定するのに全身状態の評価を実施します。一般血液検査、尿検査、心臓の状態などなどを評価していきます。
この3つの柱を通して、現在、動物の罹患している腫瘍の全体像を無駄なくとらえ、治療の戦略を考えていきます。
専門用語、専門知識がかなり出現する場面にはなりますが、当院ではオーナー様がすこしでも理解できるように、わかりやすい言葉で説明するように努力しています。
腫瘍の治療
腫瘍の治療というと、古典的な考え方にはなりますが、外科・内科(抗がん剤や分子標的薬など)・放射線治療が3つの大きな柱になります。現在もこの3つは腫瘍治療の要となるものです。そして、この3つを組み合わせて総合的に治療していくことになります。
当院では、この3つの柱を軸としつつも様々な治療を行っています。
そもそも、オーナー様の腫瘍治療への考え方は千差万別、とにかくいろいろな考え方があります。「もうワンちゃんがかなり高齢だからいろいろやりたくないな…」「動物は自然に任せるのが一番!」「いろいろ治療してあげられないけど、なにかしてあげたい」「せいいっぱい積極的な治療をしたい!」一次診療の現場にいると様々な腫瘍への考え方を目にします。
よって、その様々なオーナー様の考え方に沿って治療計画を提示していきます。どんな治療法、究極、無治療であったとしても、オーナー様が納得できて、動物たちがこのオーナー様と出会えてほんとによかったなぁと思えるのであれば、その治療は正しいものであると考えています。動物たちがオーナー様と共に過ごすかけがえのない時間、寄り添いに勝る治療はないんじゃないかなぁとも思います。治療法が獣医腫瘍学のセオリーとは離れたものになるかもしれませんが、すこしでもオーナー様と動物の絆にそっと寄り添いたいと思います。
腫瘍の治療については総論のような記事に終始しましたが、今後、腫瘍の治療についてくわしい記事は「病院からのおたより」または「腫瘍記事」で書いていきたいと思います。
猫の腫瘍については「猫のこと」に記事をまとめています。下のバナーから閲覧してください。