今回は(狂犬病予防法に基づく)犬の登録の特例制度
いわゆる、
みなし登録
とはどんなものなのかな?という紹介記事になります。
マイクロチップ関連の事務を私が1年担当して感じたことを交えながら、わかりやすく書いていきたいと思います。
①犬の登録とは?
犬のオーナー様には、
生後91日以上の犬を飼い始めた日から30日以内にその犬を各市区町村に登録する義務(狂犬病予防法に基づいて)
があります。
そして、登録すると
「鑑札」
~鑑札は必ず犬に装着しておく義務があります~
~鑑札には登録番号が記載されています~
が交付され、
「各市区町村の犬登録台帳」
に記載されます。
この登録をするのは犬の生涯で一回限りです。
~もし、オーナー様が変わる時は新規登録ではなくて登録事項変更になります~
ちなみに、
犬の登録と鑑札交付は市区町村役場(高知市だと生活食品課窓口)だけでなく、動物病院でも可能です。
~新規登録には3000円の登録手数料がかかります~
では、
なぜ登録が法律で義務化されているのか?その目的は?というと
飼い犬を登録する目的は、犬の所有者を明確にすることです。これにより、どこに犬が飼育されているかを把握することができ、狂犬病が発生した場合にその地域において迅速かつ的確に対応することができます。
~厚生労働省のサイトからそのまま引用~
ということになります。
②犬のみなし登録とは?
環境省データベース「犬と猫のマイクロチップ情報登録」が稼働されて以降、犬の登録に上記とは別の方法が生まれました。
狂犬病予防法の特例制度に参加している市区町村では、
環境省データベース「犬と猫のマイクロチップ情報登録」にマイクロチップ情報を登録すると、国から各市区町村にその情報が送られ、狂犬病予防法に基づく犬の登録も申請されたものとみなされるようになりました。
かんたんに言うと、
環境省データベース登録=各市区町村の犬登録台帳に自動記載
…こんな感じになりました。
そして、
挿入されているマイクロチップが鑑札とみなされることになりました。
~鑑札番号はマイクロチップ番号になります~
いろいろと「~が~とみなされる登録」なので
このような登録を
「みなし登録」
と呼びます。
みなし登録の場合は、鑑札は交付されません。
~マイクロチップが鑑札とみなされているから~
さらに、
3000円の登録手数料が無料になる市区町村もあります。
↑高知市はすごくわかりやすいマイクロチップ登録関係の案内チラシを作成しています。とにかくマイクロチップ制度についての周知徹底が必要だと思います。
みなし登録のいいところ♪をまとめると、
・役場や動物病院に行かなくても犬の(狂犬病予防法に基づく)登録が自動でできるし、鑑札も装着しなくてよい!
・登録手数料3000円がいらないこともある!
・環境省データベース情報を変更すれば犬登録台帳も自動で変更される!引っ越しの時も手続き楽々!
・とにかく手続き楽ちん!めっちゃ便利なシステムだぁ!
・理想のワンストップサービスだぁ!
いいところだらけ!となりそうではあるのですが、
現実は必ずしもそうではなくて、とにかく現状では煩雑なシステムになっています。
煩雑なところを3点私なりに考えてみると…、
(1)狂犬病予防法の特例制度に参加するorしない
そもそも、みなし登録は
犬の所在地を管轄する市区町村が狂犬病予防法の特例制度に参加していれば可能な登録方法です。
特例制度に参加していなければ従来通り犬の登録をする必要があります。
~マイクロチップを装着・情報登録していても鑑札交付→装着が必要です~
要するに、
みなし登録できるかは、住んでいる市区町村が狂犬病予防法の特例制度に参加してるかどうかで決まります。
すべての市区町村が特例制度に参加していれば話はすっきりわかりやすいと思うのですが…
参加している市区町村としていない市区町村があるため、オーナー様にとっても動物病院にとってもわかりづらいものとなっています。
~みなし登録できるか否かをその都度確認しないといけないので手間が増えます。参加状況も時々刻々と変化するのでエラーが発生しやすくなると思います~
国と地方自治体の足並みがそろっていない感じなので、特例制度によって利便性が必ずしも向上したとは考えづらい状況です。
(2)みなし登録=登録手数料0円とは限らない!
さらに煩雑だと思うことが、
みなし登録できた(その市区町村が特例制度に参加していた)としても、
狂犬病予防法に基づく登録手数料3000円が必要かどうかはその市区町村次第ということです。
要するに、
犬の所在地を管轄する市区町村によって狂犬病予防法に基づく登録手数料が必要だったり、いらなかったりする!
~ちなみに、高知県では、高知市、大豊町、四万十町、宿毛市はみなし登録の場合、登録手数料3000円を徴収していません~
その時、必要かどうかは市区町村に問合わすしかない。
~必要な場合はみなし登録後に納付書が市区町村から送付されます~
ということになります。
とにかく、煩雑でわかりにくいシステムだなぁと思います。
(3)所有者変更登録をしていないオーナー様が多い!
ペットショップで購入して間もない犬猫がワクチンや健康診断に来院するケースは当院でもよくあります。
もちろん、
ペットショップで昨年6月以降に購入された動物の場合、マイクロチップはきちんと装着されています。
そして、
マイクロチップの登録証明書がオーナー様に渡されていると思います。所有者変更の説明も受けているだろうと思います。
にもかかわらず、
ペットショップ経由の初診動物を診察する時、
「所有者変更登録はしましたか?」
と質問してみると、
ほとんどのオーナー様から「していない」という答えをいただきます。
↑所有者変更の手続きを義務化しているのにそれを徹底させているように感じません。私も含め全ての業界関係者の努力が必要だと思います。もし、この制度を発展させようとするならば。
オーナー様の中には、
所有者変更登録してるか、してないかさえもよくわからないオーナー様も多く、
「どの書類のことなのかなぁ?」
「登録って何?マイクロチップってなに?」
というオーナー様もよく存在します。
ペットショップでマイクロチップ関連の説明をきちんとうけているのかなぁ?と思うほどに、所有者変更登録の必要性が周知されていません。
マイクロチップが装着・登録された犬や猫を、ペットショップやブリーダーなどから購入した場合や譲り受けた場合は、30日以内に飼い主の変更を行ってください。
とマイクロチップ情報登録公式サイトに書かれているように、
必ず所有者変更登録を30日以内にしていただくようお願いいたします。
ちなみに、所有者の変更登録していないと
~特例制度参加の市区町村の場合~
狂犬病予防注射(+犬の登録)の時、鑑札交付(みなし登録)はもちろんのこと、狂犬病予防注射済票交付が動物病院で原則できなくなります。少なくとも高知県では。
~スマホがあれば院内のその場で所有者変更登録できなくはないと思いますが~
動物病院からは狂犬病予防注射接種証明書を発行するのみです。
特例制度参加市町村担当課で鑑札交付(みなし登録)や済票交付をしてもらう必要があります。
上記の例からもわかるように、
狂犬病予防注射時の手間と時間を考えると、なるべくすぐに所有者変更登録をしておいたほうがいいと思います。
~しておいたほうがいいというか、これはオーナー様の義務です~
余談ですが、
マイクロチップが狂犬病予防注射済票とみなされることはない
ので済票は必ずワンちゃんに装着しておく必要があります。
~ゆくゆくはみなされるかもしれませんが…鑑札は装着の必要なし、済票は必ず装着…う~ん…という感じです~
以上、3点が煩雑なところだと私が思うところです。
③システムをわかりやすく地道に説明していく!
販売に供される犬や猫のマイクロチップ装着が義務化され
そして、
環境省の「犬と猫のマイクロチップ情報登録」が稼働されて以降
マイクロチップ関連の事務や犬の鑑札交付事務及び狂犬病予防注射済票交付が煩雑になったのは否めないと思います。
私が煩雑だと思う上記3点+αを簡潔にまとめてみると…
犬の所在地を管轄する市区町村によって
・特例制度に参加しているところもあれば、参加してないところもある。
・参加していたとして、登録料3000円を徴収するところもあれば、しないところもある。
・特例制度に参加してないと思ったら、後から参加してくるところもある。
さらに、
・所有者変更登録してない場合、鑑札も済票も院内で原則出せない。高知県では。
~特例制度参加市町村担当課に直接行く必要がある~
・既に鑑札交付済みの犬がマイクロチップ装着して環境省データベースに登録したら元の鑑札を返さないといけない場合がある。
・肝心の所有者変更登録がほとんど周知されていない。
そもそも、
・マイクロチップの登録制度自体も知らないオーナー様が多い。
~マイクロチップというものは知っているが登録・活用法がまったく知れ渡っていない~
・AIPOデータベースをはじめとする民間のデータベースと環境省データベースがあるためにわかりづらい。
などなどです。
マイクロチップ制度を通して国が目指している理想像や利便性を高めたいという想いはわかるのですが、
現状として、いろんなことがバラバラです。
~煩雑なシステムからは人的エラーが生まれやすいです~
そして、
一般の方々の多くがマイクロチップ制度についてほとんど何も知りません。
おそらく、
オーナー様は制度についてなんの知識もないままマイクロチップ装着済みの動物をペットショップで購入しています。
こんな状況ですが、
この制度をよりオーナー様が利用しやすくするために微力ながら私ができること
たとえば、
この制度について手の届く範囲の方にはわかりやすく説明して理解していただくこと
を地道に実践していきたいと思います。
煩雑な点が分かっているからこそオーナー様に対してできることがあると私は自負しています。
マイクロチップのことでわからないことがあれば全て副院長にご相談ください。