今回は犬のクッシング症候群の内科治療で最近思ったことのお話です。
犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)とはどんな病気なのか?くわしい解説はここでは割愛します。Google様におまかせします。
超かんたんにいうと
副腎という小さな臓器から不必要にホルモン(コルチゾル)がどっかんどっかん分泌されて体に悪影響を及ぼす病気
です。
副腎そのものが悪い場合もあるし、副腎に分泌命令を出している脳の下垂体が悪い場合もあります。

↑当院でのエコー画像。クッシング診断にあたり左右の副腎の大きさ・形態は必ずエコーでチェックします。mm単位のこんなに小さな臓器が非常に重要な役割をしています。「小さな巨人」と言われるのにも納得です。ももクロの緑だった人のようです。
ワンちゃんではどちらかというと下垂体が悪い場合(下垂体性クッシング)が多くなります。
副腎皮質機能亢進症(特に下垂体性)の内科治療ではどっかんどっかん副腎から分泌されるコルチゾルの産生抑制のために毎日お薬を飲みます。
この時、毎日お薬(当院ではトリロスタン)を飲むだけではなく

↑犬の副腎皮質機能亢進症のお薬の1つであるアドレスタンさん。動物用医薬品です。カプセル剤で中に粉が入っています。ぜぇっ~~ったいにカプセルを開けないようにオーナー様にお話しします。薬の微細粉末暴露をさけるためです。妊娠されている方がご家族にいないかの確認も必要だと思っています。薬剤暴露からオーナー様を守ることは重要です。
ワンちゃんの臨床症状を観察しながら、コルチゾルが過剰に抑制され過ぎてないか、不十分な抑制ではないか、良好な抑制なのか
をモニタリングしていかなければいけません。
要するに薬の効果判定が必要になります。
そこで
私は薬の効果判定のために臨床症状の観察に加えて、ACTH刺激試験という検査を今でも実施しています。
合成ACTH製剤を注射する前後でコルチゾルの血中濃度を測定して、薬の効果判定をするという検査です。
必要かつ重要な検査だとは思うのですが、
オーナー様の経済的負担が大きいかなぁ
そもそも頻繁にできる検査でもないなぁ
合成ACTH製剤を過剰に注射することも抵抗があるなぁ(ラットの報告もあるし)
こんな感じで思っていて、もっと簡略化して効果判定できないかなとずっと思ってました。
そんな中、
トリロスタンを飲んで3時間後のコルチゾルの血中濃度を測定して、薬の効果判定をできるんじゃないか!
という学会の講演を見ました。
ACTH刺激試験なしでのトリロスタンの効果判定
というのに魅力を感じました。

↑何度も登場した当院のフジフィルム様免疫反応測定装置。コルチゾルも15分弱で測定できます。院内で外来中に結果がわかるので非常に有用です。
これなら、合成ACTH製剤もいらないし、もう少し細やかに効果判定できるのではないかと思いました。
オーナー様の経済的負担、ワンちゃんの体への負担も減るかと思います。
なるべくワンちゃんをお預かりすることなく、外来診療で迅速に結果をだしていきたいと私は思っているのでこのような方法も検討していこうかと思います。
とはいえ、すぐにこの方法に飛びつけるわけもなく、自分なりにもっと知見を集めて勉強・熟考してみます。