ネコの臍ヘルニア

 ヘルニアとは体の中の臓器が本来あるべき場所から別の部位に脱出してしまった状態をいいます。

 ヘルニアの中でも臍ヘルニアとは、

 出生後に本来閉じるべき臍輪(かんたんに言うとおへその穴みたいなもの)があきっぱになることでお腹の中のものが臍輪から脱出してしまっている状態をいいます。

 臍ヘルニアの場合、ネコちゃんのおへその部分がポコッとでていることが多く、オーナー様でもかんたんに臍ヘルニアを疑うことができます。

 おへそのポコッとでた部分(以下、ポコ部)を軽く指で押してみてポコ部がなくなる(お腹の中にもどる)ようであるなら、すぐに手術が必要ではないと思います。

 スーパーヤングネコちゃん(6カ月齢前後)まででポコ部が柔らかくて痛くもかゆくもない場合、経過観察で自然に穴がなくなってヘルニア状態が解消される場合もあると思います。

 このように経過観察で問題ない場合もあれば、

 ポコ部で炎症がおきて痛みがでている。硬い。しかもヘルニアの中身がお腹に戻らない場合

 ポコ部の穴があまりに大きくなっている場合←いろいろな臓器が腹腔から脱出してくる可能性

 このような場合は早急に治療したほうがよいかと思います。

 経過観察で済まない場合もあります。

 先日、当院で臍ヘルニアのネコちゃんのヘルニア整復術を実施しました。

 ヤングネコちゃんのためしばらく経過観察していたのですが、これ以上経過観察しても自然に治ることはなさそうということになり、

 オーナー様の希望で避妊手術と同時にヘルニアの整復を実施しました。

 このネコちゃんは、経過観察していたことからもわかるようにノーアクシデントポコ部です。

↑ノーアクシデントポコ部の写真。臍ヘルニアと診断しているのですが、ノーアクシデントポコ部のため写真からは臍ヘルニアかどうかよくわかりません。避妊手術という機会があったためにヘルニアを整復することになりました。通常の避妊手術に比べて術創が大きくなるのがデメリットの一つです。

 腹腔との穴(ヘルニア輪)はほどほどの大きさ、ヘルニア内容は脂肪が考えられ痛くもかゆくもない。腹腔内に余裕で行き来できる。という意味でノーアクシデントです。

 臍ヘルニアは遺伝性疾患の側面もあるので去勢・避妊手術と臍ヘルニア整復を同時に行うことは意義があると思います。

 ヤングネコちゃんで術前にノーアクシデントポコ部であれば、ヘルニア整復術後の経過は良好です。再発もほとんどありません。

 ちなみに上の写真のようにノーアクシデントポコ部だからといって、ずっとネコの臍ヘルニアを放置してよいのか?経過観察をずっと継続してよいのか?

…難しいところですが

 急に重大なアクシデント発生も考えられるので、麻酔をかけて実施する処置・手術の機会があれば臍ヘルニアを整復したほうがいいと私は思います。

 もちろん臍ヘルニア整復術単体を実施することを検討してもよいと思います。

ということで、

ネコの臍ヘルニアをかんたんにまとめると、

 ネコの臍ヘルニアは急いで治療しないといけない緊急性のある場合と、機会をみて治療(整復)しても問題ない場合→様子を見ていい場合があるということです。

 緊急性があるのか?様子を見ていいのか?という判断はオーナー様では難しい場合もあるかと思うので、心配なようであればかかりつけの獣医師に一度ご相談ください。

猫の情報
2022年04月22日