★この記事は2022年6月20日に加筆しています★
2021年2月9日に公開した記事への加筆です。加筆部分はきちんと提示しています。原文はそのままです。
★この記事は2023年7月13日にも加筆しています★
2023年7月13日にライト・ギムザ混合液作成動画を公開しています。こちらをクリックしてください。
日々、診療をしていると何かと染色が必要になるケースがあります。生体から細胞や血液、耳垢などを採材して顕微鏡をのぞいても、そのままではよく見えません。ところが、採材したサンプルに色を染めるとよく見えるようになります。
このように色をつけることを染色といいます。
染色方法はいろいろあるのですが、当院では主にディフ・クイック染色、もしくはライトギムザ染色を行っています。どちらかといえば、ほとんどの例でライトギムザ染色を実施します。
ディフ・クイック染色は、その名の通りスライドをケースの中でシャカシャカやってクイック(数分)で染色できます。速さが売りなのですが、染色性(色合い)がいまいちなため個人的に私は好きではありません。
↑ディフ・クイック染色セット。薄い青色の固定液が蒸発しやすいのが難点。
診察中にすぐに結果が知りたい耳垢検査や、手術中に行う細胞診の時くらいしか私はディフ・クイック染色をしません。
それに比べてライトギムザ染色の場合、手間と時間がかかります。全行程30分以上かけて染色します。手間暇かけて(実際たいした手間ではないですが)自分で乾燥、固定、染色液作成、染色という工程を辿ると「(心が)ととのったぁ~」となります。
↑ライトギムザ染色に使用する試薬たち。新鮮なメタノール固定液はいいですね。
時間かかる代わりに染色性はとてもよくて、微妙な色合いもきちんと染色してくれます。その日の心の機微までも染めあげてくれる気がします。染色液をスライドにかけた後の30分は期待と不安でいっぱいです。
私は病理医ではないので、クイック染色でも全然問題ないとは思うのですが、このような個人的な好みでライトギムザ染色を積極的に採用しています。好みとともに、腫瘍症例の細胞診・血液塗抹を私がくわしく見たいというのもあります。
当院での細胞診は、私が顕微鏡をのぞいて診断が終わる場合もあるし、判断に迷うときは病理センターに提出することもあります。手間と時間をかけて染色しても、診断結果まではととのわないこともよくあります。
それでも、採材→標本作成→乾燥→固定→染色液作り→染色→水洗→鏡検の全工程をスタッフに任せず私一人でやりたいし、やりきります。
むしろ、私の方がライトギムザ染色に染められています。
以上、ただの個人的趣味と偏見と好みで染められた染色の話でした。
~ここから2022年6月20日加筆~
ライト・ギムザ染色のやり方(簡易版)
以下のやり方は私が普段実施しているライト・ギムザ染色のやり方(方法)です。あくまで参考程度にしてください。
1.サンプルを乾かす
ドライヤーでもいいし、スライドを激しく手で振ってもよいと思います。
とにかくサンプルをひいたら速攻乾かす。
いくら速攻といっても、
ダイソンドライヤーだと風量が強すぎてスライドがぶっ飛んでいくリスクが大きいと思うのでダイソンドライヤーはお勧めしません。
乾かす工程はけっこう大切で、サンプル作成したらすぐに風乾させることがよい染色につながると私は信じています。
上手にサンプルがひけたぁ!と余韻に浸っている場合ではありません。すぐ風乾です。
2.メタノール固定
新鮮なメタノールを使用してスーパードライなサンプルに適当な量をマウントする。
メタノールは瓶から出してすぐに使用。新鮮さが命です。
使用する時に使用する量を瓶から出して、その都度使用。
メタノール瓶の保存にも気を付ける。密封・暗所保存。
固定時間はせいぜい3分で大丈夫だと思ってます。
3.ライト・ギムザ混合液を作成
私の場合はライト染色液とギムザ染色液と緩衝液(バッファー)の混合液を作ってから染色しています。
以下は昔々に教科書を見て覚えたレシピです。
・血球染色用リン酸緩衝液(pH6.4)=10ml
・ライト染色液原液=1ml
・ギムザ染色液原液=0.4ml
を混ぜて混合液を作ります。
実際はスライド3枚程度の染色であれば混合液5mlもあれば過不足無いのでレシピの半分の量で作成しています。
↑必要な量をシリンジで用意します。シリンジを使うと効率的に混合液を作れる気がしてそうしています。使用済みシリンジを洗って使って問題ないです。
5mlのシリンジで作ると楽なので、シリンジに5mlの緩衝液をとって、そこにライト液0.5ml+ギムザ液0.2mlを混ぜて作成しています。
↑こんな感じでライトとギムザを5mlのシリンジに混ぜていきます。完成後、5mlのシリンジでスライドにマウントします。個人的にライトから混ぜます。不二雄・F・藤子先生では間違いだというのと同じ理由です。
4.サンプルに混合液をマウントして30分待つ
混合液をマウントする前にメタノールは適当に捨てておきます。
~ピッピッとやるだけです。スライドにアルコール滴がついてても気にしません~
その後、
サンプルに混合液を適量マウントして30分待ちます。
必ずしも30分かはわかりませんが、基本私は30分待っています。
はやる気持ちを抑えてとにかく待ちます。
5.水洗
私は容赦なく水道水でジャァ~っと流します。
塗抹面に直に水道をかけます。
染色工程を通して超個人的に思うこと
普段のライト・ギムザ染色時、それぞれの液体の温度について私はそれほど気にしていません。緩衝液のpHをその都度測定することもありません。
ライト・ギムザ染色は温度やpHに染色性が左右されるところがあるのですが、そこまで私は気にしていません。
温度やpHの違いは、どん兵衛の粉末スープが袋に微量残っていても気にしないのと同じレベルだと私は勝手に思っています。袋からかき出さなくても、そんなことでどん兵衛のおいしさに大差なし!と私は思います。
工程の中で私が大切だなと思うのは風乾と水洗です。
迅速な風乾と容赦ない水洗が工程の中でなにより大切だと個人的に私は思っています。
~容赦ない水洗=ケルヒャーでの水洗ではないです。常識レベルの容赦なさを考えてください~
ライト・ギムザ染色の「風乾と水洗」はUFOの湯切りみたいなもんで迅速かつ的確さらに容赦なくすることが求められるものだと私は思います。
中途半端に湯切りされたUFOや「流しがボンッ!」に驚いて湯切りがおくれたUFOは個人的に好きではありません。
~ただの好みと偏見の話ですが…~
あと、
毎回、すべての染色工程を同じように同じ感じでやるのが大切かな?と思います。
映画モダン・タイムスのネジを締めるルーティンワークほどとはいいませんが、染色性の均一化のためには「同じように」が大切だと思います。
同じようにすれば、私の中でシャカシャカ・ロックの異名を持つディフ・クイック染色ほど染色性にばらつきは出ないと思います。
それでも、
同じ感じでやってるのに多少の心の機微が表現されてしまうのがライト・ギムザ染色だと思います。
ライト染色液は細胞質や顆粒の染色性がよくギムザ染色液は核の染色性がよいというようにそれぞれのいいところをあわせたのがライトギムザ染色です。
全く違う性格をもつライトさんとギムザさんが互いに足りないところを補いながら協力していく様子は、夫婦生活の参考にいつもしています。
以上、ただの個人的趣味と偏見と好みでさらに染められた染色の話でした。
~2022年6月20日加筆はここまで~
2023年7月13日に加筆
ライト・ギムザ混合液の作り方
週に何度も作成しているライト・ギムザ混合液の私の作り方を紹介したいと思います。
アドリブ一発撮影のため至らない点もありますが興味のある方はご覧ください。
この動画はしゃべり、撮影、編集などすべて素人の私が作成しています。
↑えっこれだけ?と思うかもしれませんがこんな感じでライトとギムザを混ぜています。