染色と私

 日々、診療をしていると何かと染色が必要になるケースがあります。生体から細胞や血液、耳垢などを採材して顕微鏡をのぞいても、そのままではよく見えません。ところが、採材したサンプルに色を染めるとよく見えるようになります。

 このように色をつけることを染色といいます。

 染色方法はいろいろあるのですが、当院では主にディフ・クイック染色、もしくはライトギムザ染色を行っています。どちらかといえば、ほとんどの例でライトギムザ染色を実施します。

 ディフ・クイック染色は、その名の通りスライドをケースの中でシャカシャカやってクイック(数分)で染色できます。速さが売りなのですが、染色性(色合い)がいまいちなため個人的に私は好きではありません。

 ↑ディフ・クイック染色セット。薄い青色の固定液が蒸発しやすいのが難点。

 診察中にすぐに結果が知りたい耳垢検査や、手術中に行う細胞診の時くらいしか私はディフ・クイック染色をしません。

 それに比べてライトギムザ染色の場合、手間と時間がかかります。全行程30分以上かけて染色します。手間暇かけて(実際たいした手間ではないですが)自分で乾燥、固定、染色液作成、染色という工程を辿ると「(心が)ととのったぁ~」となります。

↑ライトギムザ染色に使用する試薬たち。新鮮なメタノール固定液はいいですね。 

 時間かかる代わりに染色性はとてもよくて、微妙な色合いもきちんと染色してくれます。その日の心の機微までも染めあげてくれる気がします。染色液をスライドにかけた後の30分は期待と不安でいっぱいです。

 私は病理医ではないので、クイック染色でも全然問題ないとは思うのですが、このような個人的な好みでライトギムザ染色を積極的に採用しています。好みとともに、腫瘍症例の細胞診・血液塗抹を私がくわしく見たいというのもあります。

 当院での細胞診は、私が顕微鏡をのぞいて診断が終わる場合もあるし、判断に迷うときは病理センターに提出することもあります。手間と時間をかけて染色しても、診断結果まではととのわないこともよくあります。

 それでも、採材→標本作成→乾燥→固定→染色液作り→染色→水洗→鏡検の全工程をスタッフに任せず私一人でやりたいし、やりきります。

 むしろ、私の方がライトギムザ染色に染められています。

以上、ただの個人的趣味と偏見と好みで染められた染色の話でした。

2021年02月09日