私が関東地方から高知に戻ってきて初めてみた病気がいくつかあります。
~私は大学卒業後、しばらく関東地方のとある病院で勤務していました~
そのうちの1つが、ネコの耳ヒゼンダニ(耳ダニ)症です。
もう、十数年前の話なのですが、
「高知では耳ダニ症ってよくある病気なんだなぁ」
と日々思いながら仕事していたことを今でも思い出します。
そんなこんなで、
今回はネコの耳ヒゼンダニ(耳ダニ)症についての個人的見解を書いていきたいと思います。
ちなみに、
同じヒゼンダニでもショウセンコウヒゼンダニについてはネコの疥癬の記事←要クリックになります。姉妹記事になります。こちらも興味があればご覧ください。
①めちゃくちゃかゆい!耳がかゆい病気!
耳(外耳道)に耳ダニが寄生するとめちゃくちゃかゆいです。
その症状はかゆみ一択!といっても過言でないと思います。
めちゃくちゃ耳がかゆいとネコちゃんは、
かゆすぎて、耳をかきまくります。
→耳周辺が傷だらけ、化膿してジュクジュクしたりなどハードな外耳炎になることもあります。
かゆすぎて、頭をふりまくります。
→ものすごい遠心力による刺激で耳に血液がたまったりします(耳血種)。
かゆすぎて、まともに寝られないこともあります。
すべての動物にとってかゆみは半端ないストレスになります。
そういう点で、厄介な病気です。
と同時に、
オーナー様が臨床症状に気付きやすい病気だと思います。
②耳ダニは人間にうつるのか?
猫の耳ダニが人の耳でライフサイクルを送ることはほとんどないと考えられていますが、はぐれ耳ダニのせいで人の皮膚に赤いプッチンみたいなのができることはあります。
実際にオーナー様からそういう話を聞いたことがあります。
猫との接触度合い・頻度によると思いますが、
うつるというより、
はぐれ耳ダニにエンカウントして攻撃される
ようなイメージだと思います。
③猫の耳ダニの見分け方は?
ネコちゃんが耳をすごくかゆそうにしている!
はたして、
耳ダニのせいなのか?それとも耳ダニ以外のせいなのか?
それをオーナー様でもかんたんに確実に見分けられるやり方はあるのか?
はっきりいって、
そういうやり方はありません。すぐにでも近くの動物病院を受診してください。
所定の検査方法で診断できるはずです。
では、
④猫の耳ダニを見分けるヒントはあるのか?
見分けるヒント(猫の耳ダニを疑うヒント)は私の中でふたつあります。
ヒントひとつめは、
耳ダニの猫の耳掃除を軽くすると、後肢で耳をカタカタカタァ
~耳をカタカタカタァ=後肢で耳をかくような仕草~
です。
多分、
家庭のふわふわ綿棒で耳の穴の浅い所を軽くコチョコチョしても耳ダニの時はカタカタカタァする
と思います。
カタカタァする時、耳垢検査をしてみると耳ダニがいることが多いと思います。
ヒントふたつめは、
⑤耳ダニの猫に特徴的な耳垢
です。
耳ダニの時は乾いた感じの黒い耳垢
~ひどい外耳炎or,and感染も併発している場合を除いて~
になっていることが多い気がします。
いったいどんな耳垢か?言葉で説明しきれないので当院で撮影した下の写真も参考にしてください。
↑なんかドライで黒い耳垢というのが耳ダニがいそうな耳垢です。上の写真は典型的なもので顕微鏡を除くと夢に出るほど多くの耳ダニがいました。
こんな感じの耳垢の時、耳垢を顕微鏡で観察してみると耳ダニがいることがよくあります。
以上ふたつが私の中で耳ダニを疑う所見になります。
もし、
カタカタカタァ+ドライなブラック耳垢
であれば、
強く強く耳ダニを疑って確定診断に必要な検査をします。
↑耳垢を顕微鏡で見ると容易にダニは観察できます。これほど多くのダニがいれば、耳がかゆいのも無理ありません。
なお、
これらふたつの耳ダニを疑うヒントは経験からくる個人的見解であり、なんのエビデンスもありません。
⑥治療は耳の洗浄(≒掃除)からの駆虫薬投与
ネコの耳ダニ症の治療をシンプルにいうと、
ダニをやっつける!なるべくはやく!
です。
今現在、ダニをやっつけるお薬は複数存在していて猫の状態やオーナー様の事情にあわせて私は処方しています。
イベルメクチンを注射することもあるし、イベルメクチンを薄めて耳道内に直接投与することもあるし、各種スポット製剤を使用することもあります。
~耳ダニ駆除の効能を持つスポット製剤は複数存在しています。月に1度投与するだけでそれなりの駆除率が確認されています~
↑当院で用意している耳ダニ駆除の薬の一例。ネクスガードコンボはすごいですね。ほとんどの寄生虫をノックアウトできます。ショベルカーで潮干狩りに行くみたいな感じです。個人的にはコンボという文字を見るとどうしてもコンボイの謎の悪夢を思い出します。当院サイトでも何度か紹介しました。数ドットの弾に知らない内にやられる悲劇。残機性のために一発ノックアウトのゲームシステム。開始早々、気付かないうちに即死。どこから打たれて、なにに当たったんだろう?背景と弾のコントラストほぼなし。それでいて、なんで敵はこんなに小さいんだ!当たらんじゃないか!たけしの挑戦状のほうがぬるく感じるほどです。大学の後輩のF君がコンボイの謎を必死で全クリしたときは感動しました。
耳道観察・洗浄とあわせて、これらの各種駆虫薬を投与することによりダニをノックアウトします。
耳ダニ症は早期発見して早期治療すれば、確実に治る予後良好な病気です。
とはいえ、
発見も治療も遅れてしまうと…大変なことに…
たとえば、
耳ダニ寄生が原因で耳がグチュグチュになるほどひどい外耳炎になっているノラ猫ちゃん
こういうケースは、比較的よく当院でも診ます。
治療が遅れて耳ダニからの外耳炎をこじらせてしまうとけっこう厄介な病気になります。
そして、
治療にかなり苦慮します。
最後になりますが
とにかく、
猫の耳ヒゼンダニ(耳ダニ)症は、
重症化すると治療が困難になるので、なるべく早期に発見して、駆虫薬投与などの早期治療をするのが一番だと思います。
ネコちゃんが耳をやたらとかゆがっているのを発見したらなるべく早く近くの動物病院を受診することをおすすめします。
よく外にでるネコちゃんの場合、駆虫して治ったとしても再度耳ダニが寄生するということもあるので
耳ダニに適応があるスポット製剤を定期的に投与する
~ノミやフィラリア予防もかねて~
のも場合によってはいいかなぁと思います。