ネコの子宮蓄膿症

 本日2022年2月22日はねこの日ということです。しかも今年は2が6つも並ぶ貴重なねこの日のようです。

ということで、

 今日はネコちゃんの子宮蓄膿症について当院での対応や私見をかんたんに紹介いたします。かんたんに!という割に今回も長文になります。

 子宮蓄膿症とは、かんたんにいうと子宮がバイキンにやられて炎症を起こし、子宮に膿がたまる病気です。

 犬の子宮蓄膿症は比較的発症率が高めの疾患ですが、ネコちゃんの子宮蓄膿症はそれほど多く診ないかなぁという感じがします。

 犬は自然排卵動物で、猫は交尾排卵動物であるという違いが子宮蓄膿症の発症率に影響しています。

 子宮蓄膿症の発症には、排卵後に分泌量が増加するプロジェステロンというホルモンが大きく関与しているのですが、

 猫は交尾刺激がないと排卵しないので、犬ほどプロジェステロンに子宮が刺激されない。

 犬は年に数回の自然排卵後、妊娠してもしなくても長期にプロジェステロンが分泌される。よって、犬はブロジェステロンに子宮を刺激される頻度・時間が生涯で猫より高く・長い。

そんなこんなでかんたんに言うとこんな感じです。

→猫は犬ほど子宮蓄膿症になりにくい

猫の子宮蓄膿症は早期発見しにくいなぁという印象

 犬の子宮蓄膿症だと多飲多尿という症状がよくあるのですが、ネコちゃんではあまり多くみられません。

 私の経験上の話ですが、多飲多尿という主訴でネコちゃんの子宮蓄膿症を診断することはほとんどありませんでした。

 ほとんどの主訴が「ネコちゃんのお腹がなんかすごい張ってる。なんとなく元気ない。食べが悪い。」というもので、

身体検査で陰部を診てみるとすこし膿のようなものがあったりなかったり…

いろいろ検査してみると

子宮蓄膿症だったという例が多いように思います。

 避妊(不妊)手術を主訴に来院されて、偶然診断される例も当院では多いかなと思います。この場合、ネコちゃんには何も臨床症状がない場合が多数です。

 避妊(不妊)手術の例からも分かるように、早期ではネコちゃんの様子が普段とほとんど変わらないので、オーナー様が猫の子宮蓄膿症を早期に発見することは困難かなぁと思います。

次に猫の子宮蓄膿症の治療ですが

~大前提として、治療せずに放置して治癒することはめったにないと思います~

 当院ではほぼ外科手術=子宮卵巣摘出術による治療になります。

 犬と違って猫の子宮蓄膿症の治療で、内科的治療で子宮から排膿させることは特段の事情がない限り、私は強く推奨していません。

 もちろん、ネコちゃんの年齢・既往歴・全身状態を考慮して、術前に様々なリスク評価、合併症の確認をしたうえでの外科手術になります。術前の状態によっては全身状態の改善をまず実施します。

 腹膜炎を併発しているなど、あまりに全身状態が悪い場合は他院を紹介することもあります。

 猫の子宮蓄膿症の手術を執刀する際には、パンパンに張っている子宮を破裂させないようにかなり気を付けています。膿が溜まってパンパンにテンションのかかった子宮は、ちょっとした刺激で裂けることもあるので、かなり慎重にならざるをえません。

↑当院で先日摘出した子宮蓄膿症のネコちゃんの子宮の一部。左の子宮角にのみ蓄膿しており右の子宮角はすこし腫れているだけで蓄膿はしていませんでした。左右大きさを比べるといかに膿が溜まっているかわかります。けっこう消化管の圧迫もあったのですが、このネコちゃんに目立った臨床症状はありませんでした。

 万一、術中に子宮が裂けた時の準備もしておきます。

↑膿をシリンジで吸いだしてみるとこんな色の膿が溜まっていました。もしも気付かずに破裂したら厳しい状況になることが予想されます。術中は、この膿をとにかく腹腔内に散布させないように最大限努力します。

 あえて内科的治療での排膿からの治癒を目指そうとすれば、

抗生剤を当然投与しながら、

製品名アリジン(Alizin)という海外薬による治療があるのですが、過去猫に使用して「うまく全部排膿できた!アリジンでほんとによかった!めっちゃいいやん!」という成功体験が私にはありません。あくまで「私には」ですが。それなりに改善するといった印象です。

 治療選択肢として提示しようとは思いますが、基本的に「猫にアリジン」はこれからもオーナー様に強く推奨はしないと思います。あくまで治療選択肢の一つです。

↑当院ではアリジンを常備しています。アリジンは日本未承認動物薬でしかも子宮蓄膿症に対しての使用は効能外使用になります。そのことをいちおう説明してからの使用がよいのかな?と私は思っています。犬の子宮蓄膿症内科治療では当院でよく使用するお薬なのですが、猫では積極的には使ってないのが現状です。

 猫の子宮蓄膿症は大きな合併症もなく、外科的にきれいに子宮卵巣を摘出すれば予後は良好になります。

 ただ、外科手術には術前・術中・術後にリスクが確実に存在するので「外科で確実に治ります!外科最高!!」というわけではありません。

 内科・外科。どちらの治療法もメリットデメリットがありますので時間が許す範囲で丁寧に説明していきたいなと思っています。


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2022年02月22日