ネコのさくら耳について
当院でのネコのさくら耳(耳のV字カット)について捕捉は左の赤字リンクです。ぜひ閲覧してください。2022年7月13日に加筆です。
ネコのさくら耳(耳のV字カット)の重要性について捕捉は左の青字リンクです。2022年10月6日に加筆です。
ネコのさくら耳(耳のV字カット)の重要性について補足~第2弾~は左の緑字リンクです。2022年11月11日に加筆です。
ネコのさくら耳~TNR活動からTNSR活動へ~は左のピンク字リンクです。最新の記事をぜひ閲覧してください。2022年12月12日に加筆です。
当院でも、野良ネコちゃんのさくら耳(耳のV字カット)の施術をおこなっています。
さくら耳(耳のV字カット)は、不妊(避妊)・去勢手術を受けている「しるし」になるものです。この「しるし」がない場合、何度も捕獲され、麻酔をかけられるリスクが野良ネコちゃんに生じてしまいます。
当院ではさくら耳の施術は、どちらかというと美容外科に通じるものと思っているので、なるべくきれいに形成できるように努力しています。
そのため、野良ネコちゃんの耳のカット全頭に高周波ラジオ波メスを使用しています。
↑当院の高周波ラジオ波メス
高周波ラジオ波メスを使うと
きれいに、切れ味鋭く、すばやく切れる!
よって、イメージ通りに施術できる!
電気メスと違いこげつきもなく、皮膚組織へのダメージ少ない。
はさみ、通常のメスと違って出血すくなく、カットが繊細
このようなメリットがあるので高周波ラジオ波メスを使用しています。
耳というのは、だれもが目に入る場所なので、なるべくきれいに形成できるようにします。
実際、出血もほとんどないので止血作業もほぼ必要ありません。
施術の前に患部を消毒して、切開線をいれます。
↑切開ライン
この切開線通りにきれいに形成できます。
さくら耳のネコちゃんは、一世一代の命を懸命に生きています。やさしく見守って、私たちと共に幸せに生きていけるようにしたいと思います。
野良ネコちゃんの不妊(避妊)、去勢手術の後にさくら耳施術をご希望の場合は、遠慮なくお申し付けください。
ここからは2022年7月13日に加筆
当院でのネコのさくら耳(耳のV字カット)について捕捉
ACジャパンさんの「HELLO 地域猫!」のCMを最近よく目にします。
そのCMではワールドクラスのキティちゃん(ハロー略)がローカル代表の地域猫ちゃんのさくら耳(耳のV字カット)を紹介していました。
キティちゃんと地域猫ちゃんの毛色の対比が印象的なCMでした。
立派なリボンで飾られた真っ白なキティちゃんがまぶし過ぎました。
そんなこんなで、
ネコのさくら耳はなんのためにするのかというのは、この記事の最初にも書いてありますしGoogleさんに聞けばすぐにわかります。
かんたんにいうと、
さくら耳(耳のV字カット)は避妊・去勢済みの「しるし」です。
この「しるし」がないと
避妊・去勢をしているかどうか分からないので、
「しるし」がないノラ猫ちゃんは、地域猫活動の中で
何度も捕獲・麻酔・開腹される事になります。
このようなことがないようにさくら耳(耳のV字カット)をしています。
さくら耳(耳のV字カット)に否定的な意見もありますが、
あくまで、
さくら耳(耳のV字カット)は猫ちゃんの穏やかな生活を守るための施術です。
人と猫が幸せに共生するために必要だと私は思っています。
とはいえ、
さくら耳(耳のV字カット)は耳の形態を損なうものなのでさくら耳に代わる誰にでもすぐに分かる「しるし」が何かあればとは思うのですが、現状よいアイデアが私には浮かびません。
以前は、猫の耳にピアスをするという「しるし」もありました。ただ、時間経過とともにピアスの部分が炎症を起こしたり化膿することがあったために今では猫にピアスという「しるし」は使用していません。
マイクロチップを活用すればいいのかな?と思ったことがありますが、パッと見で判断できないし読み取り機がないとわからないので現実的ではないと思います。
さくら耳(耳のV字カット)に勝る「しるし」が今のところないというのが現状です。
さくら耳(耳のV字カット)にした後は大丈夫?
ちなみに私見ですが、さくら耳(耳のV字カット)はサステナブルな「しるし」と思います。
耳をV字カットした後にカット部分に炎症や化膿といった術後トラブルが発生したのを私は見たことありません。
耳介の形が変わるので、集音能力が落ちたり、感覚がにぶるという可能性はあると思うのですが日常生活に支障がでるほどのものではないと思います。
地域猫活動をしている方のお話からも、さくら耳にして「猫の様子が変になった」という話は聞いたことありません。
1000頭以上の当院でのさくら耳(耳のV字カット)施術の中で術後数年にわたって問題になった例はありません。
さくら耳(耳のV字カット)は痛そう?
さくら耳(耳のV字カット)にする時に痛そうというイメージを持たれる方もいますが、たしかにそういうイメージを持たれても仕方ないところはあると思います。
しかし、当たり前ですが全身麻酔かつ疼痛管理された状態で獣医師によって施術されるものなので「痛み」というのはほぼないだろうと思います。
当院では高周波メス(エルマン)を使用して施術するために、大部分の例で無出血で焦げ付きのない施術をしています。
↑施術直後のカット面。エルマン使用により無出血かつ組織損傷のないカットができます。切れ味も鋭く、素早い施術が可能になります。
施術時間は5秒程度なので術中の「痛み」という心配はそれほどいらないと思いますし、術後鎮痛もあるので術後の痛みの心配も過度にしなくてもよいと思います。
避妊手術・去勢手術の疼痛管理がきちんとできていれば、セットで実施する耳カットの痛みの心配はいらないと思います。
左右どちらの耳をV字カットするのか?性別で違いは?
基本的にオスが右耳、メスが左耳のV字カットという慣習はあるようですが、特に統一見解はないと思います。どっちにしなきゃだめ!という強制力はないと私は認識しています。
高知県・市で実施されているネコの不妊去勢手術費用の補助制度においても左右の指定はありません。
「しるし」は必要ですが、どちらの耳に「しるし」をつけるかは獣医師の裁量になります。
左右どちらに「しるし」をつけるかというよりは、誰もが「しるし」をすぐに認識できてその意味を共有できることが何より重要だと私は思います。
当院では手術依頼された方の希望があればそれに従うようにしています。
さくら耳(耳のV字カット)のデザインは?
「しるし」という役割を考える以上、パッと見てわかる大きさ・デザインを意識して私は施術しています。
大きすぎず小さすぎず「しるし」を確実に認識できる範囲でカットの形を決めています。
↑理想的には大きすぎず小さすぎず誰もが認識できるさくら耳のデザインを目指しています。
たまに手術依頼された方から、
「なるべくカットを小さくしてください」
という希望をいただきますがパッと見てわからなければ意味がないのでわかる範囲で対応させていただいています。
ここからは2022年10月6日に加筆
さくら耳(耳のV字カット)の重要性
さくら耳(耳のV字カット)が避妊・去勢済みの「しるし」というのはここまで書いてきた通りです。
今回は、
この「しるし」の重要性
そして
当院での「しるし」のない地域猫やノラ猫ちゃんに対する避妊手術への心構えも書いてみたいと思います。
当院では避妊・去勢手術のために捕獲された地域猫やノラ猫ちゃんが毎日のようにやってきます。
さくら耳(耳のV字カット)という「しるし」がなければ、その一頭一頭について見た目だけで「この猫が避妊・去勢手術済みかどうか?」ということは獣医師である私にもわかりません。
手術前にできる範囲で身体検査をするのですが、身体検査をしたとしても手術しているかどうかは正確にわからないことがあります(特にメス猫の場合)。
だからこそ、
さくら耳(耳のV字カット)という「しるし」がない限り、「もしかしたら避妊・去勢済みの可能性もある!」と脳の片隅に思いながら避妊・去勢手術に取り組むようにしています。
理想的には、
麻酔をかける前、遅くとも切皮や開腹の前に避妊・去勢済みということに気づきたい!
そして、
元の場所にさくら耳(耳のV字カット)をして猫ちゃんを戻したい!
と当院スタッフ一同は思っています。
とはいえ、その理想通りにはならないこともあります。
・手術済かどうか?オス猫ちゃんの場合
オス猫であれば外から見てわかる睾丸の有無で手術済かどうかすぐわかるから
それなら、
オス猫はさくら耳(耳のV字カット)しなくてもよくね?
と思う方がいるかもしれませんが、オス猫においても、さくら耳(耳のV字カット)はめっちゃ重要です。
そもそも、
睾丸があるべき位置に2つないオス猫=去勢済み
とは限りません。必ずしもイコールではありません。
~地域猫やノラ猫の場合は特に~
さくら耳(耳のV字カット)+睾丸があるべき位置に2つないオス猫=去勢済み
であればたしかにそのイコールはほぼ正しいと思います。
しかし、さくら耳(耳のV字カット)がないと
さくら耳(耳のV字カット)なし+睾丸があるべき位置に2つないオス猫=去勢済み or 潜在精巣(陰睾・停留精巣)
~繁殖能力という点を考えればさくら耳(耳のV字カット)なし+睾丸があるべき位置に2つないオス猫≒去勢済みと考えられなくはないが…~
となってしまい、潜在精巣(陰睾・停留精巣)の可能性も考慮しないといけないので
~猫の潜在精巣については上のピンク字をクリックして当院記事をご覧ください~
睾丸がないから去勢済みでよくね?
は全くよくなくて
あえて「よくね?」的なものの聞き方をするとすれば、
さくら耳(耳のV字カット)していて睾丸が見当たらないオス猫だから去勢済みでよくね?
であれば「そうでしょう。」になると思います。
「確実にに去勢しているオス猫の証」としてのさくら耳(耳のV字カット)は非常に重要な「しるし」になります。
あと、間違った認識として
睾丸が見えないからメス猫なんじゃね?
というのもあります。
実際、さくら耳(耳のV字カット)がない去勢済みオス猫が未避妊メス猫と勘違いされて捕獲されるケースもたまにあります。
すでに去勢されているのに、また捕獲されるなんて猫にとってはたまったもんじゃないと思います。
ただ、この間違いは猫の雌雄鑑別に慣れていない場合仕方ない側面もあるとは思います。
こんな時もさくら耳(耳のV字カット)さえあれば、メス猫と間違われることはあっても捕獲されることはないと思います。
まとめると、
オス猫(地域猫やノラ猫)の場合、さくら耳(耳のV字カット)がないと、たとえ睾丸が外見上見えなくても、去勢済みか潜在精巣(陰睾・停留精巣)なのかがわからない。
それだけでなく、
メス猫と間違われることもある
ということです。
・手術済かどうか?メス猫ちゃんの場合
手術当日の朝、はじめて出会ったメス猫ちゃんが避妊手術済みかどうか?外見から私にはわかりません。
避妊手術済みかを見抜くスピリチュアルな力も私にはありません。
地域猫活動をされている方が一頭一頭の発情兆候をずっと観察記録しているというのならわかるかもしれません。ただ現実的にそれは困難だろうと思います。
地域猫やノラ猫ちゃんの性ホルモンの値を術前から追跡していく!なんてことも現実的に困難だろうと思います。
大前提として
さくら耳(耳のV字カット)がないメスの地域猫やノラ猫=未避妊
とみなされてしまいます。
地域猫やノラ猫ちゃんの場合、避妊手術済かどうか?は最低でも麻酔をして剃毛してからでないとわからないと思います。
当院では地域猫やノラ猫ちゃんの避妊手術の前に
・身体検査による全身状態の評価
・オスとメスの確認
・さくら耳(耳のV字カット)の有無の確認
は当たり前として
・麻酔→剃毛後に手術痕がないか?の確認
を必ずしています。
↑当院で撮影した画像。臍の下の四角で囲んだところになんか傷の痕みたいなのが見えますが、これは手術痕ではありません。通常の避妊手術を実施しました。
↑当院で撮影した画像。この場合は手術痕になります。傷に対して垂直に縫合痕があります。ここまできれいに剃毛しないと手術痕は見えません。さくら耳(耳のV字カット)がない限り避妊手術済みかすぐにわからないことをご理解いただけると思います。
あきらかな手術痕がある場合、開腹はせずに避妊手術済みとみなしています。
開腹手術は避妊手術に限ったものではないので手術痕=避妊手術済みと断定することは絶対にできないのですが、
開腹して術野をひろげて子宮卵巣を必死で探索することは、猫にとっても負担が大きいと思うので
メス猫のあきらかな手術痕=避妊手術済み
~エコーで卵巣の有無をできる範囲で確認して~
と数年前から当院では判断しています。
そして、さくら耳(耳のV字カット)をします。
もちろん連れてこられた方には術前から術後にかけて了解を得るようにしています。
ただし、
手術痕の位置や触感や見え方で手術済みか迷う時は開腹することもあります。
子宮卵巣を切除済みなのか、卵巣のみ切除済みなのかさえも分からない状態での探索なのでけっこう大変です。
子宮の痕跡みたいなのが見つかるときもあるし見つからないこともあります。
最終的にノーマルの子宮や卵巣がつり出せるかどうかを判断基準にしています。
ちなみに
昔は手術痕があってもすこしでも可能性があるならと開腹して探索をしていたのですが、
「剃毛後に手術痕(みたいなの)がある」と当院複数のスタッフで確認した猫は100%近く避妊手術済みだった!
~その後、妊娠した!や発情がきた!という報告がないのをその根拠にしています~
ので開腹してまでの確認はいらないと私は思っています。
やっぱり、
できるかぎり開腹という外科的侵襲をなくしたいという思いがあるのですこし甘めの手術済み判定になっています。
~批判もあるかとは思いますが、莫大な数の避妊手術を担当させていただいた当院の経験とカンに頼っているところがあります~
まとめると、
①メス猫(地域猫やノラ猫)の場合、さくら耳(耳のV字カット)がないと、ほぼ100%未避妊とみなされて何度も捕獲される苦難を味わう可能性がある。
②当院では、メス猫(地域猫やノラ猫)の避妊手術時にあきらかな手術痕がある場合、開腹はせずに避妊手術済みとみなしてさくら耳(耳のV字カット)にする。
ということです。
やはりメス猫(地域猫やノラ猫)においても、さくら耳(耳のV字カット)という「しるし」があるかないかでネコちゃんのストレスが大きく異なってきます。
ここまで獣医師目線での話になるのですが避妊・去勢済みの「しるし」の重要性を書かせていただきました。
TNR活動が活発な今、さくら耳(耳のV字カット)のない地域猫やノラ猫ちゃんは常に追われる立場にあると思います。
猫を捕獲→避妊去勢手術→元の場所に戻す。
という活動の意義はよくわかります。
ただ、
避妊去勢手術を受けた猫はTNR活動の中で捕獲されないように、
~もし捕獲されたとしてもすぐ解放されるように~
したほうがいいと思います。
そのために必要な「しるし」がさくら耳(耳のV字カット)です。
さくら耳(耳のV字カット)の意味や重要性を多くの人で共有することにより、誰に追われることもない穏やかな生活を地域猫やノラ猫ちゃんに送ってもらいたいと思います。
もう何度も書いていますが、さくら耳(耳のV字カット)は地域猫やノラ猫ちゃんと人が幸せに共生するための方法の1つです。
ここからは2022年11月11日に加筆
さくら耳(耳のV字カット)の重要性の補足
つい先日も、メス猫の避妊手術で手術済みなのか?を考えるケースがありました。
ノラ猫ちゃんの避妊手術をご依頼いただいた時の話になります。
下の写真のように、術前にさくら耳(V字カット)がないことは確認しています。
↑毎朝避妊・去勢手術のために来院された猫ちゃんの耳を確認することは徹底しています。当たり前のことなんですが、当たり前のことを当たり前にできるようにスタッフ一同気をつけています。
さくら耳(V字カット)の有無や全身状態を観察した後、
通常通り全身麻酔から術野の剃毛をしていきます。
ある程度剃毛していくと、
あっ!?
おへその下になにか傷跡があることに気づきました。
腹側の正中、おへその下、3㎝前後のまっすぐな傷
↑経験上、ノラ猫ちゃんや地域猫ちゃんのお腹を剃毛してみるとこういう傷跡がけっこうあります。明らかに手術痕とは関係ないところにあることもあるし、通常の正中切開部位にあることもあります。
う~ん、もしかして避妊手術済みかも?
と思って傷の部分を触診してみると、
あきらかに手術の傷ではなさそうだったので
~縫合の目安である傷に対して垂直の線もないし!だからといって100%手術済みを否定することはできませんが…~
そのまま開腹して避妊手術を続行しました。
開腹→切皮後に白線の乱れはなく、子宮卵巣も存在していたので何の問題もなく避妊手術を終えることができました。
もう何度も繰り返して書いていますが、
メス猫ちゃんは「さくら耳」というしるしがない限り外見から避妊手術済みかどうかはわかりません!
~発情兆候を一頭一頭に対してきちんと記録管理していれば別ですが~
そして、上の例のように
おへその下、正中付近にまっすぐなキズをもっているノラ猫ちゃん・地域猫ちゃんは私の経験上ちらほら存在します。
~剃毛しないかぎりそのキズは人間に気付かれることもないと思います~
そのキズがあきらかに手術痕ではない!
~上の例のように~
もしくは
これは手術痕だ!
と自信をもっていえることが当院ではほとんどですが、
もしかしたら手術痕かも?微妙だなぁ。
と思うことも年に何回かはあります。
どうしてもどっちかわからない時は、切皮からの開腹をおこないます。
今回お伝えしたいことをまとめると、
お腹に古キズをもっているノラ猫ちゃん・地域猫ちゃんはけっこう多い!
~それが手術で切開する位置周辺にあることもちらほら!~
だからこそ、メス猫の避妊手術の時に
古キズ VS 古手術痕 どっちなのか?
を考えるケースがあって、
ほとんどのケースではそれを見分けられるけれども、
~そもそも見分けられたとして、手術痕=避妊手術痕では必ずしもないですが…~
~ノラ猫ちゃん・地域猫ちゃんが避妊手術以外の開腹手術をうけてる可能性はかなり少ないだろうという想定から避妊手術済みとします~
どうしても判断がむずかしいことが稀にある。
もしかしたら、一般の方の中には
「さくら耳なくても、お腹の剃毛してみたら手術痕で避妊手術済みなのかわかりそう!」
「もし、間違って捕獲されて麻酔かけられても手術痕を見れば開腹までは避けられそう!」
と思われるもいるかもしれませんが、
古キズ VS 古手術痕
を考えると必ずしもそうでもないことをご理解いただけると思います。
当院サイトだけでなく、他サイトや雑誌などいろいろな媒体から、
そして
いろいろな角度からいろいろな目線で
ノラ猫ちゃんや地域猫ちゃんのさくら耳の重要性や意義を考えていくことは大切だと思います。
当院サイトのさくら耳関連の記事がその一助になればいいかなと思います。
ここからは2022年12月12日に加筆
前回2022年11月11日加筆記事の
古キズ VS 古手術痕 どっちなのか?問題
の捕捉になるのですが、
今月もどっちなのか?迷う地域猫ちゃんの避妊手術の執刀を担当することがありました。
手術に際してもちろんできる範囲での身体検査、さくら耳がないかのチェックの後、その猫ちゃんに麻酔をかけて手術部位を剃毛しました。
するとお腹には、なにか傷跡がありました。
↑緑の枠内がおへその位置。青い枠内が傷跡。猫ちゃんの太り具合から手術済みとも考えられるし、でもこの傷跡がなんなのか?ただの古キズか?悩ましいところです。
私が避妊手術を執刀するときは必ず臍の下から切開をいれるのですが、その傷跡はけっこう臍から離れた位置にありました。
しかも、
縫合痕もないし、手術痕にしても切開線変に曲がっているし…傷跡の触診でもよくわからない。
すこし太っている感じのする猫ちゃんだったので避妊手術済みかもとは思いましたが、避妊手術済みでない可能性も高い。
経験上、このような感じで未避妊ということもよく経験したので。
様々な思いが交錯する中、切開からの開腹をしました。
結果、
子宮・卵巣はどんなに探索しても見当たりませんでした。
子宮・卵巣を探索するにあたり術創を拡げるのですがその時、あの傷跡直下の組織が乱れてました。
~一度開腹されているときに感じる、筋層を切開した時のザクザク感がありました~
その後、
避妊手術済みの猫ちゃんと判断して常法通り閉腹しました。
そして、さくら耳を施しました。
私の経験上、古手術痕としてレアなケースだと思います。
術後しばらくして、
排卵誘起からのブロジェステロン値を測定してほんとに絶対100%手術済みか?を確認するのも必要かと思うのですが、
そこまでは様々な事情でできません。
疑わしきは開腹せず!
なるべくそうしているのですが、それでも何千、何万手術をしても疑わしさに自信がないこともあります。
先月の話ですが
この猫ちゃんとは別に、捕獲器で来院した猫ちゃんでオス猫の去勢手術依頼だったのですが、去勢済みだったこともあります。
↑オスを見分ける場所の写真。ここまでよく見たらわかるのですが、パッと見だけではわからないと思います。あるべき位置にあるべきものが2つありません。潜在精巣の可能性もないとはいえないのでペニスのトゲトゲがないかも確認しました。トゲトゲはありませんでした。ちなみに、オス猫は去勢後ペニスのトゲトゲがなくなります。
たしかに上の写真を見てもわかるように去勢しているかどうかは分かりづらいかもしれません。
しかし、
さくら耳というしるしがあればすべて防げたことです。
とにかく、
TNR活動とさくら耳の施術は切っても切れない関係です。
TNR活動に賛同して多くの方が尽力されている今、さくら耳というしるしがないと上記のようなことが起こりえます。
さくら耳=no TRAP(つかまえない!)
に必ずしないといけません。
こんなことを考えていると、
TNR活動ではなく
TNSR活動
つまり、
T=TRAP(つかまえる)、N=NEUTER(避妊・去勢手術をする)
そして、
S=SAKURA-CAT(さくら耳の施術)、RETURN(元の場所に戻す)
にしないといけないんじゃないかな?
と思いました。
TNRには大切なSが抜けています。
TNTA活動つまり、TNからのTame(人に馴化させて)→Adopt(譲渡する)ことが明確であればSは必ずしも必要ないとは思いますが、
RETURN(元の場所に戻す)する限りS(さくら耳の施術)が必要
です。
しつこいですが、
ノラ猫ちゃんや地域猫ちゃんのさくら耳の重要性や意義を地域住民みんなで考えていくことはすごく大切だと思います。
当院の力は極微小ですが、できる範囲でTNSR活動にこれからも協力していきたいと思います。