元祖「ネコの糖尿病」はこちらのページです。
猫の糖尿病治療のくわしい話はこちらのページです。
今回はネコちゃんの糖尿病治療では避けては通れない血糖管理のお話です。
今年の1月に、当院でも猫の血糖管理に「FreeStyleリブレ(フリースタイルリブレ)」を使用していますよ!という紹介をさせていただきました。
その後、症例を重ねた中でFreeStyleリブレ(フリースタイルリブレ)について思ったことなどを書いてみます。
↑リブレはアマゾンなどで誰でも購入できる製品です。ただ、一発勝負のネコちゃんへの装着はコツがいるとも思います。
糖尿病治療のインスリン導入時にFreeStyleリブレを使用することは非常に有用だと私は今でも思っています。ただし、リブレは人間用に作られた検査用器具なので、これを猫に使用することは獣医師の裁量権による適応外使用になります。
主なリブレのメリットとして
①とにかく採血のストレスをネコちゃんに与えなくてよい。
②住み慣れたお家でリラックスした状態の血糖値をオーナー様の手でかんたんに測定できる。
③しかも、血糖曲線も自動で描画してくれる。
などが考えられます。
とはいえ、このようなメリットも血糖値の精度が担保されてはじめて評価されると思います。本当に人間用のリブレの血糖表示値で正しいのか?ということです。
結論から言うと、リブレで測定した猫の血糖値は(個人的な感触ですが)かなり精度は高いと思ってます。
装着して1日程度はたしかにフジフィルム様の血液化学装置で測定した血糖値とリブレの血糖値では+10~+20mg/dl程度違いがあります。
↑装着してすぐの場合、同時に測定したとしても専用リーダーとスマホアプリでも血糖値に差が出てきます。
↑この時、採血からの血液化学装置で測定した値が211mg/dlなので若干高めに値がでているのが分かります。
リブレの方が血糖値が高くでている傾向を感じます。たぶん、皮下に埋め込まれたセンサーが体になじんでいないせいもあると思います。
しかし、3日程度経過するとかなりその差が縮まってフジフィルム様の装置とリブレでほぼ同値になります。ピタリというのも何度か経験しました。
↑装着から3日程度経過するとだいたいリーダーとアプリの血糖値が近くなってきます。
↑この時、採血からの血液化学装置で測定した値が193mg/dlなのですべて一致しています。いつも一致するわけではないですがかなり近い値が出てきます。
血糖値の精度は血糖管理上、非常に重要になってくるのでリブレ使用時は必ず血液化学装置での測定値との比較を期間中最低1回はするようにしています。
このようにメリットの多いリブレですが、その適応はよく考える必要があります。
元気や食欲もある糖尿病のネコちゃんのインスリン導入だと適応しやすいと思うので、オーナー様に治療選択肢の一つとしてリブレを提示いたします。
適応といえば、あまりにぽっちゃりのネコちゃんだと……
糖尿病のネコちゃんの場合、ぽっちゃりしたネコちゃんがどうしても多くなります。
猫の皮下に入っているリブレのセンサーは、よく見るとほんとに繊細で尖ってもなく柔らかく短くなっています。太い眉毛みたいな感じです。
↑リブレセンサーは非常に繊細で容易にベコンとなってしまいます。装着後のネコちゃんがアクティブに動くと皮下で曲がってしまい使用不能になることもあります。人間用の器具なので仕方ありません。
設置器具(アプリケーター)の中で、このセンサーが針になった外套に包み込まれていて、そのアプリケーターをスタンプのようにパコンとすることで体内にセンサーを設置します。
↑外套の針と中のセンサーが観察できます。外套の針も結構繊細で、ネコちゃんに使用する場合きちんとベクトルを考えて使用しなければいけません。
あまりに皮下脂肪の厚いネコちゃんだと、パコンとしたときに皮膚弾力が針をうまく逃がしてしまいセンサーが皮下に入らないこともあります。
脱水などで皮膚が硬い場合も注意が必要です。針がはじかれます。
センサーが皮下に入った後も、皮下脂肪の厚いネコちゃんの場合、厚い皮下の中でセンサーが折れてしまい途中から使用不可になることもあります。
ネコちゃんの体形・状態にあわせて、その設置場所やパコンするときのベクトルをよく考えて一発勝負のリブレ装着を実施するのが大切だなと思うようになりました。
↑センサーの装着はなるべくネコちゃんの剃毛を必要最小限にしています。剃毛後、被膜スプレーを使用してからの装着でセンサーが剥がれてしまったというのはありません。
ここ最近の大きな変化はアプリ対応!
今まではリブレセンサーを読み取るには必ずリブレリーダーという専用リーダーが必要でした。
ところが、近頃はiOSやアンドロイド用にリーダーアプリ(リブレLink)が公式にリリースされており、スマートフォンでピッとするだけで血糖測定できるようになりました。
↑スマホでピッとするだけでこんなに簡単に血糖値を測定できます。画面も非常にきれいで見やすいです。
あまりに古いスマートフォンでは対応できないようですが数年以内に発売されたスマートフォンではアプリに対応している様です。
当院では、血糖値データの共有という点でまだシステムがよくわからないので専用リーダをオーナー様に使用していただいて血糖管理をしていますが、今後はスマートフォンアプリを使用したいなとは思っています。
ちなみにスマートフォンアプリと専用リーダーでの血糖値の値にそれほど大きな差はありません。設置から3日程度経過したらどちらも同じくらいの値が出ます。
様々な経験と共にFreeStyleリブレ(フリースタイルリブレ)のいいところやクセ、悪いところなどがいろいろ私なりにわかってきました。
従来の「採血からの血糖値測定」と並行して「FreeStyleリブレ(フリースタイルリブレ)による血糖値測定」も治療上の選択肢として当院では準備してあります。
どのような形にせよ、よくオーナー様とお話したうえで猫の糖尿病の治療方針を決定していこうと思っています。