ネコのFIV(猫免疫不全ウイルス)検査

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 前回のFeLV検査に続いて今回はFIV(猫免疫不全ウイルス)検査のお話です。今回も検査だけに焦点をあてているので、病態・治療などの説明は割愛しています。

 記事を書き終わってから気づいたのですが文章が長すぎでした。かんたんに読みたい方は色付いた太字だけ目を通してください。

 ネコのFIV(猫免疫不全ウイルス)検査~ショートVer.~も下にありますので手っ取り早く読みたい方はページ内リンクをクリックしてご覧ください。2022年6月27日に加筆しました。

 迅速キットを用いたネコのFIV(猫免疫不全ウイルス)検査は、抗体検査になります。血中にウイルスがいるかどうかを判定する抗原検査ではありません。抗体がネコちゃんの体に存在すると、高い割合でウイルスに感染しているという前提に基づいた診断になります。

 なお、FIVは基本的に一生涯持続感染になります。FIVはFeLVのようにウイルスが排除されることはありません。

 この検査が抗体の検出という性質上、検査結果は、①感染抗体だけでなく、②FIVワクチンによる抗体、③お母さんからの移行抗体のことを考える必要があります。

 なぜならば、キット検査ではこれら3つのタイプの抗体を判別できないからです。

 上記3つのタイプの抗体を院内キットでは判別できないことを理解するとネコのFIV(猫免疫不全ウイルス)検査の解釈がよりわかりやすくなります。

↑再登場のアイデックスさんのキット。左がFIV判定、右がFeLV判定になります。左右をしっかり覚える必要があります。どちらがどちらか忘れることがあるので必死で覚えます。独り言です。

たとえば、

 大切なネコちゃんがFIV(猫免疫不全ウイルス)検査をして陰性でした。

「ほっと、安心した!」

 この場合、感染していない可能性はかなり高くなります。いろいろ複雑に考えずに検査陰性で素直に安心してよいと思います。

 しかし、感染初期でキット検査陰性になってるのかもしれないということはあります。

 ウイルスに感染したかもしれないという心当たり(外でケンカなど)が検査前にある場合は、1~2か月経過してもう一度検査してみるとより確実に感染状況がわかります。

別のケースとして、

 大切なネコちゃんがFIV(猫免疫不全ウイルス)検査をして陽性でした。

「さあ、これからどうしようか?」

 この場合、これからのことを悩むオーナー様が多いです。FIVはネコちゃんがウイルスを自力で排除する可能性もないので、すこしでも長く無症候期間が続くようにネコちゃんをうまくケアしてあげる必要があります。

 ただ、悲観するだけでなく、きちんと事実を受け止めてできることを先回りして実行していけば、これからも幸せにネコちゃんは暮らしていけます。

 FIV陽性のネコちゃんでも、他の陰性のネコちゃんたちと同じくらい幸せに長生きしているケースも多々見てきました。

 抗体陽性=猫エイズではなく、いかに発症させないようにするか、無症候で維持するかがとても大切になります。

 ただし、仮に陽性だったとしても少し考えないといけないのは、②FIVワクチンによる抗体、③お母さんからの移行抗体の有無です。

 半年未満の子猫の場合、移行抗体で陽性になっているのかもしれないので、さらに半年後くらいにもう一度院内キット検査をしてみることをお勧めします。

 FIVワクチンを過去に接種している場合は当然陽性がでます。検査前が理想ですが、FIVワクチンを接種しているか否かをよく考えてみる必要があります。

 そもそも、FIVワクチンを接種している猫はかなり少数だと私は思うので、飼い猫以外でFIVワクチン抗体で陽性になるケースは大変レアケースだとは思います。

 オーナー様がFIVワクチンを猫に接種させたことがないのならば、ワクチン抗体による陽性という結果はほぼないだろうと思います。感染抗体陽性と判断します。

 どうしてもワクチン抗体と感染抗体の判断がつかない、真実を知りたい場合はFIVのPCR検査を推奨します。PCR検査で結論はでます。

 このように院内キットを用いたネコのFIV(猫免疫不全ウイルス)検査は、場合によっては複数回実施するとよりよくネコちゃんの感染状況を把握できるようになります。

 私の感覚ではFeLV検査と比較してFIV検査は感染初期を疑う時や、子猫ちゃんを除くと、単回検査でも感染状況を把握できるんじゃないかなあと思います。

 ちなみにネコのFIV(猫免疫不全ウイルス)ワクチンの接種は当院では現在実施していません。なぜならば、ワクチン接種の需要が当院では少なかったからです。

 あと、このFIVワクチンは、すべてのサブタイプに有効なものではなく一部のサブタイプに対してのみ感染防御するというワクチンなので、接種するかどうかはよく考えてからのほうがいいかもしれません。

 スーパーかんたんに言うと、FIVの最大の予防方法は完全室内飼育です!

 人間の世界も猫の世界もケンカはあんまりいいことないのです!

↑長文の後の癒しのイラスト。当院スタッフのオリジナルイラスト原画。名前は「ぬっ子ちゃん」鉛筆だけでいい感じで描かれています。


ここからは2022年6月27日に加筆

ネコのFIV(猫免疫不全ウイルス)検査~ショートVer.~

FIV感染は猫同士のケンカで咬まれることによるものが多数

→感染猫の唾液が傷を通して体内に入り感染。

FIV最大の予防法は屋内で飼育すること

→屋外にでるチャンスがあると感染危険率が跳ね上がります。

院内キットを用いたFIV抗体検出には偽陽性・偽陰性が存在。

→検査結果をきちんと解釈しよう!

ということで

ネコのFIV(猫免疫不全ウイルス)検査のかんたん解釈

FIV検査=陽性の解釈のポイントは!

・猫が六ヶ月齢超えているかどうか?

→六ヶ月齢未満であれば、ファミリーヒストリーがわかってない限り偽陽性(移行抗体の影響)もありうる。

→六ヶ月齢を超えていれば陽性=真の陽性(FIVワクチン隠れ接種済を無視できないが)

ワクチンや移行抗体の影響が気になって陽性の真偽を疑うなら

FIVプロウイルス遺伝子検査

FIV検査=陰性の解釈のポイントは

室内飼育限定の猫(健康状態も日頃から熟知)かどうか?

→室内飼育・健康把握に自信があれば陰性=限りなく真の陰性

→野外に行くor体調不良ありならば偽陰性(感染初期)もありうる。

→AIDS期の猫で抗体が検出限界以下になっているので偽陰性(エイズ末期)

陰性の真偽を疑うなら2ヵ月あけてもう一度院内キット検査。

ちなみに、

偽陰性を疑い再検査する場合は、再検査までの間必ず猫を屋内飼育かつ感染機会を極力避ける!

そうしないと検査の無限ループに陥ります。

FIVプロウイルス遺伝子検査は思ったより活躍の場がないかな?という印象

→六ヶ月齢未満の猫ちゃんに対して移行抗体の影響を度外視したFIV検査ができる。

メリットは大きくこれだけかなと思います。
~感染初期だからといって必ずしも検出できないし、FIVワクチン隠れ接種済猫ちゃんも稀だし…~

ケーナインラボ様の解説によると、

「成猫であれば、両者の感度・特異度に大きな差はないと考えられています。」

とのことなので院内キット(ELISA法)は迅速簡便で六ヶ月齢超えている猫に精度高く使用できると思います。


猫の情報
2021年05月19日