続 ネコの甲状腺機能亢進症

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 以前にも、ネコの甲状腺機能亢進症のお話を私なりに書かせていただいたのですが、今回はその続きです。

 ネコの甲状腺機能亢進症の簡潔な特徴は
・高齢のネコちゃんに多い
・オーナー様の気付く症状として、「すごい食べているわりに体重減少」
 です。

 その治療法には内科療法、外科療法、食事療法があります。治療選択肢としての1つである内科療法は抗甲状腺薬(チアマゾール)を毎日投薬するという治療です。

 抗甲状腺薬として、以前にも紹介しましたがチロブロック錠という動物用医薬品が2021年に発売されています。

↑チロブロックさんの箱。ネコ用なのでネコの絵が書かれています。大きなリボンが甲状腺とのダブルミーニングのように見えます。

 実際にチロブロック錠を手に取るとわかるのですが、非常に小さな錠剤になっています。従来の人体薬メルカゾールとは錠剤のボリューム感が全く違います。ネコちゃんへの投薬のしやすさをよく考えている薬剤だと思います。

↑一目瞭然のボリュームの差。メルカゾールを半分にしても、チロブロックの方がネコちゃんには飲みやすいと思います。この錠剤サイズへのこだわりは製薬会社様の並々ならぬ努力を感じます。 

 必要な用量を備えた薬剤なので、分割なしで確実な用量を投薬できます。メルカゾールだと分割したら多少の誤差がでていました。

 ネコちゃんが分割錠剤を飲むときの苦い思い、スタッフが分割失敗してロスした時の苦い思い。このような思いさえもブロックしてくれます。

 人体薬と違い、チロブロック錠はネコちゃんへの安全性試験がきちんと実施されているのも安心な点だと思います。

 あえて、チロブロック錠の欠点をあげれば小さい錠剤なので、錠剤を手で出した時や投薬中に手からポロリと落ちると転がって無くす可能性があることかなと思います。

 このチアマゾールの投薬によって、甲状腺ホルモン濃度が正常化し、臨床症状の改善を認めたとして、別の問題がでる場合もあります。その問題とは隠れていた慢性腎臓病が顕在化する可能性。言い換えれば、甲状腺機能亢進症によって慢性腎臓病がマスクされている(隠されている)可能性があるということです。

 生理学の本によると、甲状腺ホルモンは心収縮力の増強、心拍数の増加にも関係しています。甲状腺機能亢進症のネコちゃんだと、過剰なホルモンによって心臓から送られる腎血流が増加して、腎機能を保っていることがあります。

 治療開始後は、甲状腺ホルモンが適正化されて、隠されていた慢性腎臓病が顕在化されていないかを常に監視する必要があります。

 治療中は必ず定期的にT4濃度、そしてCreなどの腎機能の指標もチェックするように私はしています。もちろん、臨床症状の改善のチェックも必要になります。体重のこまめな記録、ネコちゃんの食べる量の問診も重要です。

 甲状腺機能亢進症の治療は、ネコちゃんの体全体のバランス(臨床症状や血液検査の値、腎機能など)をよく考えたうえでの継続的な治療をこれからも実践していこうと思っています。


↑元祖「ネコの甲状腺機能亢進症」はこちらのページです。

↑「そしてまた、ネコの甲状腺機能亢進症」はこちらのページです。

↑「久しぶりに、甲状腺機能亢進症」はこちらのページです。

↑より読みやすい最新記事です。

猫の情報
2021年04月13日