今年に入ってから不思議と、当院では「甲状腺機能亢進症じゃないかな?」という主訴で来院されるオーナー様がかなり増加しました。
そんな中で、ネコの甲状腺機能亢進症の診断と治療で最近思ったことを何回かに分けて書いていきます。一度に書くと長すぎて読む気もなくなると思うので分けて書きます。
①甲状腺機能亢進症をすぐに診断してもよいものか?
ネコの甲状腺機能亢進症の診断において、身体検査がかなり重要なものになってきます。
甲状腺機能亢進症を疑う臨床症状、身体検査所見があって、はじめてT4(甲状腺ホルモン)値の測定をするように私はしています。よくある臨床症状については、以前の記事にも書いてあるのでここでは割愛します。
ネコちゃんの慢性的な体重減少を把握するためにも、定期的に動物病院を受診して体重だけでも記録していくことは非常に重要なことだと思います。
甲状腺機能亢進症を疑う臨床症状を主訴にオーナー様が来院されたとして、獣医師による身体検査所見からもそれが疑われる。
そんな時に様々な検査とともにT4(甲状腺ホルモン)値の測定をします。
そのT4値が8.0μg/dlをオーバーしている場合はすぐに甲状腺機能亢進症という診断からの治療に入れると思います。

↑当院で大活躍しているT4測定できる富士フィルムさんのマシン。T4値は8.0μg/dlが測定限界になります。費用対効果を考えて「8.0μg/dlより大きくて、じゃあいったいいくつなのか?」まではあまり調べていません。
しかし、T4値が3.8μg/dlや4.1μg/dlということも経験上けっこうあって、すぐに診断から治療に入るべきかちょっと考えます。
こういう時は、
臨床症状が強い場合、その他検査所見を総合判断してそのまま診断から治療することもありますし、時間をおいてT4値を再測定することもあります。
なにか併発している疾患が見つかれば、そちらを治療しながらT4値を引き続き経過観察していくこともあります。
これまでの投薬状況についても精査します。
あくまで「私はこうする」ということですが。
②エコー検査(超音波検査)もとりいれてみよう
ネコの甲状腺機能亢進症の治療において、8歳や9歳など比較的若齢の場合外科治療も選択肢に入ってきます。
外科治療の選択肢をオーナー様に提示するにあたり、甲状腺の大きさも関係してきます。
片側だけ甲状腺が大きいのか、それとも両側とも大きくないのかなど、甲状腺の形態によって外科適応の可否を推定できます。
甲状腺の大きさについては今まで私は触診に頼っていました。触診だけでは、腫大がわかることもあるしわからないこともけっこうあります。
けっこう主観的な評価になると思います。
最近は、もうちょっと客観的な評価をしようと思い、ネコちゃんの首のところのエコー検査もするようにしました。

↑当院でのエコー画像。ネコちゃんに無理のない範囲でエコー検査も実施するようにはしています。内科治療だけでなく、外科治療の利点欠点も説明しています。
ただ、エコー検査はもちろん麻酔なしでおこなうので、エコー検査をできるかどうかはネコちゃんの性格にもよります。
エコー検査の結果、比較的若齢のネコちゃんで片側の甲状腺のみが腫大していることがわかった場合、外科治療について提案することもあります。
私はネコの甲状腺摘出のための外科スキルがないので、外科対応できる他院の紹介ということにはなりますが。
↑元祖「ネコの甲状腺機能亢進症」はこちらのページです。
↑「続 ネコの甲状腺機能亢進症」はこちらのページです。
↑「そしてまた、ネコの甲状腺機能亢進症」はこちらのページです。
※ネコちゃんのいろいろな病気の診断・治療をまとめたページ猫のこと
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